爬虫類は終生飼育が難しい?
環境省が発行している「ペット動物販売業者用説明マニュアル(爬虫類)」によれば、爬虫類は哺乳類や鳥類などに比べて、終生飼育の例が非常に少ない動物なのだそうです。近年の爬虫類飼育人気や、猫や犬、鳥類などに比べて比較的手軽に飼育を始められると思われがちな事を考えると意外な事実ですよね。
爬虫類の寿命は数十年から百年超!?
その理由としては、いくつか考えられるそうですが、大きな要因の一つとして、寿命の長さがあるそうです。爬虫類は卵により繁殖を行い、1度の産卵で多くの卵を産む事からも理解できるように、自然界では、幼体から成体になれる数が非常に少ない生物で、飼育環境下においても、小さな幼体は体調変化や環境変化に弱く、飼育が難しいと言われています。一方で、成体になると比較的丈夫なものも多く、最もペットに向いたトカゲの一つとされるヒョウモントカゲモドキ(Eublepharis macularius)には28年以上生きた記録があり、グリーンイグアナ(Iguana iguana)にも30年近い飼育記録があるそうです。また、蛇にいたっては、カリフォルニアキングヘビ(Lampropeltis getula californiae)で33年4ヵ月という飼育記録があるそうです。
これらの記録はあくまで一例ですが、例え長寿記録だとしても、犬や猫をはるかに上回る寿命であるといえますよね(鳥類に関しては、寿命の長い種類も多いですが)。また、長寿といえばカメが有名ですが、身近なカメとして知られているミシシッピアカミミガメ〈ミドリガメ(Trachemys scripta elegans)〉ですら、40年ほどの寿命と言われている事は、あまり知られていないようです。カメの中には、100年以上生きているという記録がざらにありますから、40年でも短い方というのは驚きですよね。
これほど長い期間にわたると、一人の飼育者が終生飼育を全うするというのは、難しい場合も多いようにも思われますね。“販売固体が手ごろなサイズ”だったり、“鳴かない”といった事情から、爬虫類は、比較的手軽に飼育を始める事も多い動物ですが、飼育する上では、それなりの覚悟が必要だと思われます。また、爬虫類は、犬や猫などに比べて簡単に購入できる場合が多く、同じ種類で模様の異なる固体を集めるなどのコレクターも多く存在します。しかし、こうした一時的な興味で飼育を開始した固体を終生飼育できるのかという点については、疑問が生じます。
飼育では無く、ゆっくりと殺すという環境
“飼育していた固体はせいぜい3年から5年で死んでしまった”という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは固体の寿命ではなく、環境的が飼育に適していなかった可能性も考えられます。というのも、爬虫類は必ずしも適切でない飼育環境下においても、相当の期間生存する場合があるためです。このため、環境省のマニュアルでは、このようなケースを「3年から5年といった長い期間をかけて徐々に死んでいく」という表現をしています。いずれにせよ、その固体が健康であるのかという点については、日頃の観察が非常に重要なものとなると考えられます。