行方不明から5年後に見つかった飼い猫
少し前の話になるのですが、11月21日に、BBCのネットニュースで「5年前に行方不明の猫、1900キロ先で発見 奇跡の再会」(リンク先はBBC元記事)という記事が掲載されていました。
元記事の概要としては、5年前にアメリカ西部で行方不明になった飼い猫が、自宅から1900キロ離れた街で保護され、マイクロチップによる身元照合により飼い主に連絡が来て、5年ぶりの再会を果たしたという内容です。
マイクロチップの埋め込みと、行方不明の届け出をしていたおかげで最悪の事態を避けることができたとのことですが、どのようにして1900キロもの距離を移動したのか?という点については、
「ヒッチハイクでもしたんじゃない?」
といった感じでまとめているのがなんともアメリカらしいですね。
特定動物へのマイクロチップの義務化
海外では、犬や猫を飼う際にマイクロチップを埋め込む事を義務化している国もあるそうです。日本では、今年(2019年)6月に、特定動物へのマイクロチップ義務化に関する法案が可決されました。
ちなみに、ここでいう特定動物とは、現在のところ、犬、猫となっているようです。具体的には、動物の愛護及び管理に関する法律(いわゆる動物愛護法)の第31条に付帯する施行規則21条1項3号の取り決めとなります。
ちなみに、施行規則とは、法律を運用する上での取り決めのようなものであり、世上の変動が早いものなどに関し、法律を変える事なく運用規定を変える事のできるように定められている事項です。
実際の記載は、以下のような物になります(出典:環境省資料)
動物の愛護及び管理に関する法律
第三十一条
特定動物飼養者は、その許可に係る飼養又は保管をするには、当該特定動物に係る特定飼養施設の点検を定期的に行うこと、当該特定動物についてその許可を受けていることを明らかにすることその他の環境省令で定める方法によらなければならない。
施行規則
第二十条第1項第三号
特定動物の飼養又は保管を開始したときは、特定動物の種類ごとに、当該特定動物について、法第二十六条第一項の許可を受けていることを明らかにするためのマイクロチップ又は脚環の装着その他の環境大臣が定める措置を講じ、様式第二十により当該措置内容を都道府県知事に届け出ること(既に当該措置が講じられている場合を除く。)。
簡単にまとめると、
「犬、猫を飼う時には、マイクロチップか足輪、その他身元確認ができるものを装着し、都道府県知事に届け出るようにしなさい。」
という事ですね。
犬に関しては現在でも、狂犬病予防法により市町村長(厚生労働省管轄)への届け出義務が設けられていますが、これとは別の届け出が必要になるという事です。
法案は可決されていますが、決まったから即実行しなければならないという訳では無く、3年以内に施行されるとの事ですから、実質的な運用は、2022年6月までの間に開始されるという事になりますね。
今飼育している犬や猫にもマイクロチップを埋め込まないといけないの?
新しく飼い始める子には、そういった措置が採られるのは理解できたけど、今飼っている子達はどうなるの?
と、疑問に思いますよね。
結論としては、努力義務という事になります。
つまり、
「マイクロチップを埋め込んだ方が良いけど、それをしなくても罰せられる事はありません。飼い主さんにお任せします。」
という事です。
何で体内に埋め込んだマイクロチップのデータを読み取れるの?
あまり興味は無いかもしれませんが、技術的な事を少し・・・
通常、通信用の電波というのは水や金属の影響を受けやすく、水中では情報を伝達する事ができません。このため、水の塊のような体内に埋め込んだ場合には、体外に電波を届ける事ができなくなってしまう機器が殆どです。
これに対し、ペットの体内に埋め込まれる(といっても皮下ですが)マイクロチップというのは、おそらくLF帯という比較的周波数の低く(135kHz未満)、水の影響を受け難い電波を使用しているため、体内に埋め込んだとしても、外部のリーダーにより情報の読み取りが可能となるのです。
ここで、LF帯の電波機器は、アンテナを兼ねたコイルがリーダーからの電波を受ける事により、電磁誘導で発電し、電波を出力する仕組みとすることができるため、電池交換を不要とすることができるという特徴もあります。
一方で、LF帯の電波機器は、電波の到達距離が数十センチと短いため、電波を使用する機器であってもGPSやWiFiのように、十数mから数kmといった長い距離での通信はできません。このため、マイクロチップ単体で、これを埋め込んだペットの位置検索などを行うことはできません。
しかし、保護された犬や猫の身元が分かれば、少なくとも身元不明により殺処分される犬や猫を減らす事はできると考えられるため、今後の普及には期待すると共に、せっかく埋め込むマイクロチップの活用技術の進歩にも、期待したいところですね。