金魚の転覆病を改善させよう!

普段の生活ではあまり耳にしない“転覆病(てんぷくびょう)”という名称ですが、琉金やオランダシシガシラ、ピンポンパールなど、体高が高く丸味を帯びた種類の金魚を飼育した事のある方は、耳にした事がある病名ではないでしょうか。

私も何度か、飼育していた琉金やピンポンパールが転覆病にかかり、治す事が出来ずに死なせてしまった事があります。

転覆病とは

転覆病とは、その名が示す通り魚がひっくり返ってしまう症状を示す病名です。ここで、“魚が”と書いたのは、転覆病自体は金魚特有のものでは無く、他の魚にも生じることのある病気であるということからです。なお、私自身は、金魚でしか経験が無いため、タイトルではあえて“金魚の”とさせていただきました。

転覆病と他の病気との違いは、発病後も元気であるという事や、他の魚にうつる事が無いという事でしょう。

発病後も元気というのは、転覆病になったからといって、すぐに死んでしまうという事が無いという事です。逆に、転覆病になってしまっても、症状がかなり重篤になるまでは、泳ぎ回ったり、餌を食べたりと、逆さになっている以外は普通の金魚と変わらない状態で過ごしているのです。

転覆病になった後の主な死因としては、壊死(えし)による感染症でしょう。転覆病の症状が悪化すると、水面にお腹を出して浮いている時間が長くなります。そうした場合、水面から出ている部分の粘膜や細胞が痛み、腐ってきてしまい、金魚の生命力を奪うのです。

転覆病の原因は?

はっきりとした転覆病の原因は、現在も解明されていないようです。生息域や魚の種類によっても異なり、浮袋の異常や、消化不良、脊椎中の平衡感覚に関係する神経の異常など、様々な仮説が挙げられています。しかしながら、どれも明確な原因とは言えないのが現状なようです。

転覆病が発症する要因としては、飼育環境が挙げられてます。

具体的には、水質悪化や、水温低下、餌の与え過ぎなどです。水質悪化は、転覆病に限らず様々な病気を引き起こす要因になるため、できる限りこの状態に陥らないようにする事は重要です。

また、水温低下と餌の与え過ぎは、一見関係無いように見えて、実は関連が深かったりします。金魚を飼育した方は経験があると思うのですが、金魚は、体の大きさに対して非常に多くの餌を“食べる事ができます”。

また、飼育水槽がある程度大きいと、どんどん大きくなります。実際、私の飼っていた琉金やピンポンパールなども、3か月程度で4cm位だった個体が15cm以上に成長していたと思います。大きくなる種として知られるオランダシシガシラなどは、40cm台にまで大きくなる事もあるそうです。

良く食べてどんどん大きくなっていく様子を見ていると、たくさん餌をあげたくなってしまうのが飼い主の性(さが)ですが、人間や他の動物でもそうですが、食物の過剰摂取は、消化不良の原因となります。また、水中生物は、水温が低下すると活動量が落ち、食べる量も減ってきます。

このため、餌を大量に食べた状態で水温が低下したりすると、消化不良を起こし、転覆病の症状が現れたりする事も多いのです。また、胃腸が異常に膨らんだ場合には、他の臓器や脊椎を圧迫、変形させ、神経面での影響が出たりするのかもしれません。

治療方法は?

残念ながら、転覆病に一定の治療方法は確立されていません。これは、原因が明確になっていない事にも起因します。一般的に、初期症状に“効果がある”と言われている治療方法には、

・水質改善

・加温

・絶食

・食塩添加

などがあります。

水質改善は、様々な病気の原因である水質悪化を防ぎ、健康状態を高める効果が期待されます。具体的な方法としては、水替えですね。

加温は、水温低下による活動量の低下を防ぐ目的です。具体的には、ヒーターを設置するなどの手段が採られます。なお、水替え時の急激な温度変化には注意しましょう。

絶食は、過食による消化不良の改善を図る事を目的としています。金魚等は、1週間くらい餌をあげなくても死ぬ事は無いため、餌の量を減らす、餌を与えないなど、様子を見ながら調整すると良いでしょう。実際、餌を減らす事で症状が改善する事もあります。

食塩添加は、滅菌効果を期待した面が強いでしょう。メチレンブルーなどの薬液を添加する場合もあるようです。

新たな試みの改善策とは?

上述したように、転覆病に確かな治療方法というものはありません。ここで提案するのは、消化不良や内臓的な疾患などを防ぐ事により、転覆病の予防と改善を試みる事です。具体的には、「爬虫類が下痢や便秘になった時にベストな方法」でも紹介した、ベンリーパック食品の「レプラーゼ」を摂取させるという方法です。

レプラーゼは、爬虫類用の腸内環境を整えるサプリメントのようなものなのですが、これに含まれる乳酸菌、酪酸菌、糖化菌、ビール酵母、たん白質分解酵素、脂肪分解酵素は、養殖ウナギ用の健康維持餌として開発されている東亜薬品工業株式会社の「トーアラーゼ」という製品とほぼ同じ成分なのです。

トーアラーゼの飼育レポートによれば、消化吸収機能の向上や、体表、鰓(えら)、肝臓、胃腸の状態を良好に保つ事、肥満防止といった効果があったと報告されています。このため、レプラーゼ(ここでは、水溶性では無いタイプ)を摂取させる事で、魚であっても、消化不良の改善、肥満、内臓疾患の改善などが図られ、転覆病の改善に繋がるのではないかと考えられるのです(実際、私の飼っていた金魚にも改善が見られました)。

私の飼育していた金魚(雑種)です。比較対象として手前に大きめのサツマイモを置いています。
上の写真で水槽の手前に置いてあるサツマイモのサイズです。
このサツマイモよりも後ろ側に居る金魚の方が大きい事がおわかりいただけますでしょうか?

それならば、魚(鰻)用に開発されたトーアラーゼを与えた方が良いんじゃないの?とも考えられると思います。しかしながら、トーアラーゼは養殖機関用に販売される飼料であるため、販売単位の量が多く(キロ単位)、アマゾンや楽天等の通販で購入する事ができないというデメリットがあります。

このため、ここでは、手軽に購入でき、かつ金魚の飼育環境下でも無駄無く使い切れるレプラーゼをお勧めしているのです。

日本国内の整腸剤専門の製薬メーカーが製造した爬虫類用生菌製剤です。

レプラーゼの与え方としては、普通の餌を与える時に、一緒に水面に撒いてやれば良いでしょう。餌と一緒に食べてくれます。

なお、上述したように、転覆病の治療方法は確立されておらず、原因も様々であると言われています。このため、同じ治療をしても効果の出る魚と出ない魚がいるものと考えられます。また、病気の進行、治療の効果も飼育環境やもともとの魚の抵抗力などによっても異なります。よって、この点をご理解いただき飼い主様の責任のもとで治療を行っていただく事をお勧めします。

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