神秘的過ぎる姿のブルードラゴンが大量漂着:新江ノ島水族館で展示中
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まだ天界の戒律が曖昧だった頃、神々は天界と地上を自由に行き来していた。
現世において“神の使い”として知られる生物は、単なる伝説や作り話ではなく、その頃に天を翔けていた生物が伝承された姿なのである。
そうした伝説の生き物の中でも、美しさと気高さを兼ね備えた姿から、全知全能の神であるゼウスに仕えていたとされるのが、ブルードラゴンである・・・
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と、そんな冒頭から始まるファンタジーの世界から飛び出して来たような美しくも不思議な姿をしたブルードラゴン。正式名称は、アオミノウミウシ(英名:Glaucus atlanticus)という、軟体動物門腹足綱裸鰓目アオミノウミウシ科に属するウミウシの一種である。体長は1cm程度から5cm程度と、比較的小さい。
ウミウシというと、“カラフルなナマコ”のようなイメージであるが、“エムラミノウミウシ”や“テングモウミウシ”など、人々を魅了する姿をした種が多く「世界の美しいウミウシ」という本まで出ているほどである。
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今回、新江ノ島水族館近くの浜に大量(新江ノ島水族館の日記によれば30個体)に打ち上げられたという“アオミノウミウシ”も、そうした美しいウミウシの一種であろう。実際“アオミノウミウシ”は、その美しく不思議な姿から、「青い竜」 (Blue Dragon)の他にも、「ウミツバメ」 (Sea Swallow)や、「青い天使」 (Blue Angel)などとも呼ばれる事があるそうだ。
新江ノ島水族館では、2020年6月11日(木)から、クラゲの研究コーナーである“クラゲサイエンス”にて展示中である。なお、6月16日(火)の段階では展示継続中であるが、生体の状態によっては、早期に展示終了となる場合もあるので、実物を見たい方は、早めに見学に行かれるのが良いであろう。
アオミノウミウシは、猛毒の刺胞を持つカツオノエボシやギンカクラゲといったクラゲ類に付着して移動することがある他、こうした猛毒を持つクラゲ類を餌として捕食する。
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そして、毒を持つクラゲ類を食べたアオミノウミウシは、毒性を有する刺胞を体内に取り込み、自身の武器として捕食者に対抗するという。
“倒した相手の武器を自分のものにする”これは正に、ファンタジーの世界を舞台にしたロールプレイングゲームの王道設定とも言えるのではないだろうか。こうした事から、姿形ばかりでなく、その生き様もファンタジーだと言えるかもしれない。
察しの良い方は既にお気づきかもしれないが、その美しく不思議な姿から、見つけたら触ってみたくなるアオミノウミウシであるが、うっかり素手で触ってしまうと、体内に取り入れた刺胞で刺される場合がある。刺胞は、アオミノウミウシの体内に取り込まれた状態でも毒性を保つため、刺された場合には強烈な痛みを覚えることとなる。
南風が強く吹いた日の後などには、上述したように日本の海岸にも打ち上げられる事があるが、刺される危険性があるため、うっかり触らないように注意してもらいたい。特にお子さんは、“小さくて綺麗な生き物”に興味を持つ事が多いため、保護者の方は十分に注意をしてあげて欲しい。