ボウガン所持の許可制に関する法改正について
令和2年12月17日、警察庁は、ボウガン(クロスボウ)の銃刀法に関する規制対象とすべき旨の有識者会議による報告書をまとめ、来年の通常国会への同法改正案の提出を目指す事を明らかにした。
ボウガンと銃刀法についての私的な考え
ボウガンの規制に関しては、本年6月に兵庫県で起きた殺傷事件が大きな影響を与えているが、相当前から鳥獣に対する虐待事件は数多く報道されている。こうした背景からすると、ボウガンの危険性を議論するのは遅すぎるように感じるのではないだろうか?
そもそも、文房具としてのカッターナイフや、料理などにも使用される包丁などが銃刀法の規制対象となっており、目的無く所持する事が禁止されているにも関わらず、普段の生活での使用用途が皆無といって良いボウガンなどは、明らかな武器であるにも関わらず規制対象となっていなかったのかが不思議である。
これを考えるには銃砲刀類所持等取締法(いわゆる銃刀法)が作られた背景が関係しているのではないかと思われる。銃刀法は、1958年に施行された法律であるが、その前段として廃刀令や日本の武装解除などがあった。
そんな中、暴力団等による抗争事件が増えたため、銃刀法による規制が成されたようだ。このため、銃刀法による規制対象は、銃砲類や刃物類とされており、抗争等で使用される事の少なかった弓矢類は対象とされていなかったのではないだろうか。つまり、当初の目的は一般人による犯罪を抑制するためではなかった訳だ。
しかし、近年では、暴対法が厳しくなった暴力団による抗争よりも、一般人による身近な武器による殺傷事件や虐待の方が目立つようになり、銃刀法の適用対象が一般人に及ぶようになってきている。このため、一般人を対象とした武器の規制という意味での銃刀法の改正が必要なのではないかと思う。
有識者会議
会議に出席した有識者委員は、
・公益社団法人日本PTA全国協議会副会長
・一般社団法人全国日本クロスボウ協会会長
・東京都立大学大学院法学部政治学研究科教授
・株式会社ステップ総合研究所所長
・日本ボウガン射撃協会常任理事
・弁護士・T&Tパートナーズ法律事務所
・中央大学大学院法務研究科教授
という方々でした。
有識者会議は、本年9月から4回にわたって行われ、この12月17日に、正式な報告書が提出された。
クロスボウの規制に関しては、簡単に手に入るのが怖いという事がメインであるが、殺傷能力があるものは危険な武器であるが、直ちにそれが事件に使用されることにはならないとの意見もあったようだ。
危険な武器であるが、それが直ちに事件に使用されることにはならないというのは当たり前のことであり、それを言うなら、ナイフやカッターの方が、一般的な使用用途がすぐに思い浮かぶし、武器としての認識も薄いのではないだろうか?うわべだけの話ではなく、もう少し一般的な見解として、なぜ規制の声が上がっているのかを検討していただきたいと思えてしまう。
ちなみに、今回検討に上がった規制の方向性というのは、以下の10項目であり、結論の概要は次の通りである。
・規制の態様
所持許可制(都道県公安委員会による許可)とすることが適当。
・クロスボウの定義、規制対象の範囲
規制対象となるクロスボウを、
①弦(弓の原理)を使用して矢を発射する機能を有する
②引いた弓を固定する装置を有する
③一定以上の威力(人の生命に危険を及ぼし得る威力)を有する
ものとすることが適当。
・所持が可能な用途
所持可能な用途は、動物麻酔、学術研究、標的射撃等の社会生活上有用な道具としての用途に限定することが適当。
・人的欠格事由等
適正な取り扱いを期待できる者にのみ所持を認めるため、人的欠格事由を設けることが適当。
・構造・昨日に関する規制
所持の許可を受けた用途との関係で不必要で過大な構造・昨日や悪用される危険性の高い構造・機能を有するクロスボウの所持は認められないこととすることが適当。
・使用方法・場所に関する規制
所持の許可を受けた用途に供するため必要な範囲でのみ使用を認めることが適当。
発射は、危害予防上問題のない場所に限り認めることが適当。
・保管方法・場所に関する規制
所持者が責任をもって自ら適切な設備・方法により保管することが原則とすることが適当。
一方、一定の保管設備等を有する者に保管委託することが危害予防上好ましいことも有り得ることから、保管委託を可能とする制度を設けることが適当。
・所持者に対する講習
所持許可を行う上で講習(座学)の受講を必要とすることが適当。
・譲渡し(販売等)に関する規制
所持許可者への譲渡しが確実になされるよう、空気銃と同様のスキームを設けることが適当。
販売事業者については、都道府県公安委員会への届出を求めた上で、販売目的のための所持を認めることが適当。
・経過措置等
規制の施行時に現にクロスボウを所持している者についても規制を及ぼすことが適当。
ただし、必要な経過措置期間を設け、その間に必要な手続きをとれるようにすることが適当。
所持を規制する事から、当然になし得る事なのかもしれないが、弓矢というのは、銃砲類や刀剣類に比べて一般人が容易に作る事ができる武器であると思われる。このため、そうしたものを作成する事自体も規制すべきなのではないかとも思う。
報告書の詳しい内容についてはコチラ
いずれにせよ、早急に規制が決定、施行され、弓矢類による犯罪や鳥獣への虐待が減る(望ましくは無くなる)事を願ってやまない。