飼い始めに知っておくべき!禁断の果実?

ペットの中で犬や猫などは特に、普段の生活環境が人間の生活環境に近いですよね。室内飼育であれば、ケージなどに入れていない場合も多いでしょう。このため、「ペットにはペットフードを」という事は理解していても、ついつい人間の食べるものを与えてしまったりする場合もあるかと思います。

しかし気をつけて下さい!人間にはとても美味しく感じられる食べ物でも、犬や猫が摂取すると体調を崩したり、場合によっては命が危険にさらされるような、禁断の果実ともいうべき食べ物もあるのです。そうした食べ物は1品だけでなく、良く知られているようなものから見落とされがちなものまで多岐に亘って存在します。

そうした食べ物の中には、「聞いた事はあるけど本当なの?」と思うものや、「人間は大丈夫なのに何で犬、猫はダメなの?」という風に思う物も多いのではないでしょうか?今回は、そうした疑問もできるだけ解決できるように、あまり知られていない真実をお話したいと思います。

果実1:見落とされがちな小さな果実

こちらは特に猫に多い事であり、子猫を迎え入れたばかりの飼い主さんが見落としがちな危険です。実は猫、牛乳などを含む乳製品に弱いんです。一口に乳製品といっても色々あるのですが、乳製品に含まれる“乳糖(ラクトース)”という成分に弱く、お腹を壊してしまう事があります。これは、ラクトースを分解する成分(ラクターゼ)という酵素が少ないためです。

人間でも同じように、牛乳を飲むとお腹を壊す人がいますが、これも同じ現象であり、人間の場合“乳糖不耐症”と呼ばれています。乳糖自体は、ほ乳類の母乳全般に含まれているため、猫も人間も、
「母乳は大丈夫なのに牛乳がダメなのはなぜ?」
と思われるかもしれませんね。これは、成分中における乳糖の割合の違いによるそうで、牛乳の場合、猫や人の乳よりも乳糖の含有割合が多いため、分解できなくなるケースがあるんです。

家に迎え入れて間もない子猫や、近所の野良猫などに、間に合わせで牛乳をあげたりする方もいるかと思いますが、その後に体調不良を生じる場合もありますので、できれば猫用のミルクをあげるようにしていただければと思います。

果実2:とても危険な大きな果実

犬や猫を飼育している方には良く知られていますが、犬や猫には、玉ねぎや長ネギ、ニラなどをあげてはいけません。これは、これらの食材に限らず、アリルプロピルジスルファイドという有機硫黄化合物を多く含む食物を与えていけないという事で、ニンニクなども含まれます。

アリルプロピルジスルファイドは、ヘモグロビンを酸化させる事により赤血球が破壊され、溶血性貧血を引き起こす要因となるためです。溶血性貧血を起こすと、酸欠状態によるふらつきや、息切れなどの一般的な貧血症状、血尿などの他、心筋や末梢神経に影響を及ぼす事もあり、最悪の場合死に至る事もあります。

「え?私は玉ねぎを良く食べるけど、何で大丈夫なの?」
と、疑問に思う方も多いですよね?実は人間も、玉ねぎなどを大量に食べ過ぎると、同様な症状を引き起こす場合があり、これを“玉ねぎ中毒”と呼んでいます。しかし、人間の場合、玉ねぎを5個、10個と摂取した場合と言われており、犬や猫に比べるとその許容量がとても多いため、殆ど気にする事なく摂取できるのです。

これは、人間と犬や猫との身体の大きさの違いの他、「ペットの臭いと消臭について知っておこう!」でも触れたように、ペット動物の中には、代謝や排泄により毒素成分を排出するクルクロン酸抱合という機能に関わる酵素(グルクロン酸転移酵素(DUPGT))の活性が人間に比べて低い動物が多いという事にも起因するのかもしれません。

また、犬や猫に与えてはいけない食べ物として有名な物が、“イカ”です。これは、生のイカに含まれるチアミナーゼという酵素が、ビタミンB1を分解し、ビタミンB1欠乏症を引き起こすためです。ビタミンB1欠乏症を引き起こした場合、末梢神経や中枢神経が侵され、筋力低下による運動機能障害や、唾液過多、呼吸不全、心不全などを生じさせ、場合によっては死に至る事もあります。

また、チアミナーゼは、イカだけでなく貝類や甲殻類、淡水魚などに含まれる他、山菜として食べられるシダ植物にも含まれているそうです。こうした成分に関しても、人間に影響が及び難いのは、許容量や毒素としての排出酵素の違いであると考えられます。なお、イカや貝類等のチアミナーゼは、鮮度が低下する事により発生するため、鮮度が高いものであれば問題無いという意見もありますが、生の魚介類の場合、アニサキスなどの寄生虫による被害も懸念されますので、生のイカや貝類、甲殻類などを与えることは避けた方が良いでしょう。また、山菜ごはんの残りなどにも気をつけてあげてください。

果実3:ギャンブル性の高い果実

少し前に衛生面での問題などから生肉のユッケが法的に禁止されたように、生肉には衛生面上の問題の他、寄生虫などの危険性を含んでいます。食用として特に寄生虫の存在に注意を促されているのが豚の生肉です。

寄生虫は大きく分けてアニサキスなどの人の目に見える大きさの“ぜん虫”と顕微鏡などを介さないと見る事のできないほど小さな“原虫”とが存在し、豚肉に寄生しているのは、トキソプラズマという原虫です。トキソプラズマは、トキソプラズマ症という感染症を引き起こす要因とされています。トキソプラズマ症は、健康な人間には殆ど影響は無いと言われていますが、免疫力が低下している場合や、ペットなどの小動物の場合、脳炎や脈絡網膜炎などの重篤な症状を引き起こす場合もあります。豚肉は安いし、生肉は食いつきが良いからといって、犬や猫に与える事は避けましょう。

果実4:与え過ぎに注意すべき果実

上でも触れたように、普段人間が普通に食べているものであっても、犬や猫などのペット動物には危険を及ぼす食べ物もあります。これは主に許容摂取量の差とも言われていますが、塩分や香辛料なども同様です。

一般的に人間の味覚は、味の濃い物、刺激性の強い物ほど“美味しい”と感じやすくなっています。 しかし、犬や猫は、「ペットの活力を引き出す空気作り」でも触れたように、汗を出すための汗腺が少ないため、塩分を排出する能力が低いです。このため、塩分の多い食品を摂取した場合には、体内の塩分濃度が高くなり、泌尿器系の病気にかかりやすくなる危険性が増してしまいます。

また、自然界では生肉などを摂取するために人間よりも胃腸が強いように思われがちな犬や猫ですが、刺激物に対する耐性は弱く、香辛料が多く含まれる食べ物などを食べてしまうと、胃の粘膜などが刺激され、下痢や嘔吐などの症状を引き起こす可能性があります。

このように、人間にとっては美味であっても、ペットにとっては毒になる食べ物は沢山あります。ついうっかり!で、ペットを苦しませる事が無いように、人間の食べるものを与える場合には、十分に注意をする事が重要です。