幻の白いオオカミ?
2019年12月16日の日経新聞電子版に、「那須どうぶつ王国にホッキョクオオカミ 20年3月登場」という記事が載っていました(リンク先は元記事)。
記事によると、那須動物王国(栃木県那須町)は、2020年3月20日に、北米に生息する動物を展示する「北アメリカゾーン」を新たにオープンするとの事。そして、その「北アメリカゾーン」の目玉として、雄雌2頭のホッキョクオオカミを展示する事になるそうです。
ホッキョクオオカミは、真っ白な毛並みが特徴で、実現した際には国内唯一の展示となるそう。絶滅が危惧されている種であり、池や滝、針葉樹など、生息域を模した環境の展示場を用意しての気合の入った展示となるようです。
ホッキョクオオカミとオオカミの違い
ホッキョクオオカミは、一般的なオオカミ(ハイイロオオカミ)の亜種とされています。
生物学的には、
ハイイロオオカミが、
ネコ目(もく)、イヌ亜目、イヌ科
とされているのに対し、
ホッキョクオオカミは、
ネコ目(もく)、イヌ亜目、イヌ下目、イヌ科
とされていますから“イヌ亜目”という分類の中で、さらに細かく分けられた種(イヌ下目)なのだなという事がわかります。
ホッキョクオオカミは、昨年、NHKの「ダーウィンが来た」などで、“幻の白いオオカミ”として紹介された事から話題となり、その後に、“ナショナルジオグラフィック”などでも取り上げられていた事から、そんな珍しい動物なら目の前で見てみたいという好奇心を持たせるにはうってつけの動物ですね。
記事では、ホッキョクオオカミは、絶滅が危惧されている種であると紹介されていますが、そもそもオオカミ自体が絶滅危惧種であり、本種であるハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)が飼育されている動物園は、国内では「多摩動物公園」のみとされています。
なお、国内動物園で最も飼育されている種は、ハイイロオオカミの亜種であるシンリンオオカミで、9箇所の動物園(円山動物園、旭山動物園、大森山動物園、群馬サファリパーク、富士サファリパーク、東山動物園、神戸どうぶつ王国、徳島動物園、平川動物公園)で飼育されています(日本胴部店水族館協会調べ)。
また、ホッキョクオオカミは、北極圏周辺に生息するオオカミながら、本種であるハイイロオオカミに比べて平均で20%程度体が小さいそうです。
これは、
「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」
というベルクマンの法則に反する生態であるため、こうした面でも、ハイイロオオカミの単なる色違いでは無く、別の種類なのだなという事がわかるような気がします(ハイイロオオカミでも、ホッキョクオオカミよりさらに北に生息するものもいる)。
オオカミと犬の違い
イヌの生物学的分類は、
ネコ目(もく)、イヌ亜目、イヌ下目、イヌ科
であることから、ホッキョクオオカミと同じく、オオカミ(ハイイロオオカミ)の亜種である事がわかります。
このため、オオカミとイヌの判別は、専門家であっても外観のみでは難しいと言われています。例えば次の写真、ホワイトシェパードと言われる白いシェパード犬なのですが、同じハイイロオオカミの亜種というだけあって、その見た目は、“ちょっと耳の大きなホッキョクオオカミ”といった感じですよね?
ホッキョクオオカミですよ!
と展示されていたら、
「やっぱりオオカミはカッコいいなぁ!」
と言ってしまいそうです。
飼育展示について
野生のホッキョクオオカミの平均寿命は7年から10年程度と言われています。
これに対し飼育環境下における最長寿命は18年とされているそうです。そうしてみると、寿命という面では、飼育環境下にある方が長く保つことができると言えるような気がしますね。
一方で、生息環境と飼育環境は、自然環境自体が異なるため、数年前にホッキョクグマの被毛内にコケが生えて緑熊になってしまった事例のような事が生じないように管理してあげて欲しいですね。